愛媛大学農学部での寄附講座「昆虫の飼料利用科学」設置について

2022.05.27

当社(代表取締役社長 岡豊)は、このたび国立大学法人愛媛大学に寄附講座「昆虫の飼料利用科学」を設置しますのでお知らせします。

概要

 昆虫は、持続的に生産可能な食料・飼料資源として注目されています。世界人口が爆発的に増大する中で、未来の食糧危機を救う手段として、昆虫食や、昆虫を利用した畜産・水産用の飼料の開発が世界各国で進められています。

 当社は、愛媛大学大学院農学研究科で2009年から研究されてきた昆虫の飼料利用の研究成果に着目し、本寄附講座の設置を通じて、飼料用の昆虫生産の事業化を目指した研究開発を行います。

 また、本寄附講座が主導する研究には、愛媛大学発ベンチャー企業である株式会社愛南リベラシオが参画し、愛媛県内の水産会社等の協力を得ながら、また愛媛県のEhime Food Innovationコンソーシアムとの連携も視野に入れつつ、愛媛県の地域産業である水産養殖の持続化に資する養殖用飼料の開発と、社会実装を進めます。

 現在、秀長水産株式会社(宇和島市)の協力の下、養殖場での実証試験の準備を進めているところです。

名  称

 昆虫の飼料利用科学

活動内容

 食用・飼料用に適した昆虫の生産技術の開発
 上記昆虫を利用した養殖用飼料の開発と実証試験
 昆虫の食利用に関わる消費者とのサイエンスコミュニケーション

期  間

 2022年6月1日から2024年5月31日までの2年間

寄附講座実施体制

寄附講座設立の背景と目的

 愛媛大学では、人口爆発の時代に向けた新たな動物性資源として「昆虫」に注目してきました。国際連合食糧農業機関(FAO)が昆虫食を推奨するなど、昆虫の食料生産への応用は世界的な流れとなっています。

 そうした中、水産養殖においては「食料危機」は今まさに現実に直面している問題です。水産養殖では、飼料に必要な動物性タンパク質を、天然のイワシ等から製造される魚粉に依存していますが、世界的な養殖生産量の拡大と、海洋環境の変化から、魚粉の製造量は低迷し、価格は高騰を続けています。また、国内で使用される魚粉の約半分は輸入されており、食料自給の面で問題が多いのも現状です。

 当社および愛媛大学は、現状の水産養殖の最も大きな問題は“魚で魚を育てる”仕組みを脱却できていないことにあると考えます。飼料作物が、食品とバッティングする畜産でも、“ヒトの食べられる作物からヒトの食べる動物を育てる”という同じ構造の問題を抱えています。この問題解決のためには、生態系における物質循環をモデルとした、新たな仕組み作りが必要です。

 昆虫には、食品残渣等の未利用資源から効率的に生産が可能な種があり、これらは国内で生産可能な良質な動物性タンパク質となり、魚粉に代わる飼料原料として有望です。これまでの試験結果から、愛媛大学が開発した昆虫由来の飼料は、魚粉を一切使わなくても、魚粉飼料と比較して養殖魚の成長が優れていることが確認されました。しかしながら、飼料用昆虫を、いかに安く・大量に生産するかという点において技術的な課題が残っており、実用化のためには継続した研究開発が必要です。

 今回の寄附講座において、愛媛大学や連携企業が中心となり、未来の食料生産モデルを世界に先駆けて打ち出すことを目指します。

飼料用昆虫(左)とその粉末(右)