TCFD提言に関する情報
基本的考え方/戦略
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近年、気候変動の進行も踏まえ脱炭素社会の実現に向けた動きが加速する中、エネルギー業界に期待される役割は大きく、また年々拡大しているものと認識しています。
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当社は、「輝く太陽のように」を企業理念に掲げ、総合エネルギー企業として、地球環境との調和を図り、安全と安心を提供し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えています。こうした理念のもとで、当社グループが将来に渡って持続的に発展していくためには、気候変動の視点を取り入れた経営の推進が必要になると考え、 TCFD提言に基づく分析を実施しましたので、以下の通り開示します。
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今後も、当社グループを取り巻く事業環境を認識し、リスク・機会の分析を深化させるとともに、当該分析を経営戦略に活かし、 カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向けた取組を一層推進してまいります。
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TCFD提言では、様々な気候変動に関するシナリオに基づく検討を踏まえて、自社戦略のレジリエンスについて説明することが推奨されています。当社では、脱炭素社会に向けた取組の加速により、気温上昇が1.5℃/2℃(産業革命時期比)に留まるシナリオ、現状を上回る施策が取られないことで地球温暖化が進展し、気温上昇が4℃(同上)となるシナリオの2つを想定し分析を実施しました。
シナリオの設定にあたっては、IEA(International Energy Agency, 国際エネルギー機関)やIPCC(Intergovernmental Panel onClimate Change, 気候変動に関する政府間パネル)が公表するシナリオを参照しています。
それぞれの世界観の概要及び参照シナリオは以下の通りです(主に国内の動向を想定) 。
戦略 - 気候変動シナリオ
1.5℃/2℃シナリオの世界観
※主な参照シナリオ
IEA World Energy Outlook 2023 Announced Pledges Scenario(パリ協定の目標達成シナリオ)、Net Zero Emissions by 2050 Scenario(ネットゼロ達成シナリオ)、IPCC第6次評価報告書SSP1-2.6
4℃シナリオの世界観
※主な参照シナリオ
IEA World Energy Outlook 2023 Stated Policies Scenario(現状の政策シナリオ)、IPCC第6次評価報告書SSP5-8.5
戦略 - リスクと機会
上記シナリオを前提に、以下の通り、当社グループが想定する気候変動関連リスクと機会の整理を行いました。なお、より鮮明にリスクと機会を捉える観点で、移行リスク及び機会については1.5℃/2℃シナリオ、物理リスクについては 4℃シナリオと、それぞれのリスクと機会がより顕在化するシナリオを念頭に置いて検討しました。
※太陽石油(株)、太陽石油販売(株)、南西石油(株)の3社を分析対象とする
※時間軸:短・中期→直近から2030年まで 長期→2030年から2050年まで
※影響度:当社グループ事業への影響を総合的に勘案し、大、中、小の 3 段階で評価
戦略 – 対応の方向性
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1.5℃/2℃シナリオにおいて急速な進行が予想される化石燃料需要の減少、そして同時に進む代替燃料への移行等、現在石油精製・販売を主業としている当社グループにとって気候変動が事業に与える影響は非常に重要であり、適切なリスクへの対処と機会の取り込みが求められるものと認識しています。
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当社グループは、今回の分析で特定されたリスク・機会に対し、
①自社CO2排出の削減
②製油所原料・機能の段階的な移行
③新分野への取組
④災害対策の強化
の主に4つの方向性で対応を進めてまいります。それぞれの内容と足下の取組状況は以下の通りです。
① 自社CO2排出の削減
製造設備における省エネの推進や、CCSの調査・検討を推進し、CO2排出の削減に向けて取り組みます。また、燃料アンモニア導入・利用に向けた協議会に参画し、製造設備・自家発電におけるCN燃料への転換に向けた検討を進めてまいります。
▶ 波方ターミナルを拠点とした燃料アンモニア導入・利活用協議会への参画
② 製油所原料・機能の段階的な移行
当社グループの使命であるエネルギーの安定供給を保つことを前提に、今後需要が拡大されるバイオマスや廃プラスチック等を原料とした製品供給に向けて製油所原料・機能の段階的な移行を検討し、ポートフォリオの最適化に努めてまいります。
木質バイオマスや廃タイヤなどを原料とした製品供給の取組を推進していくうえでは、様々なステークホルダーとの協業により、 新たなサプライチェーンを創出することが重要と考え、多様なパートナーシップの在り方を模索しています。また、取組に当たっては、「地域社会との共生」を目指す当社グループならではの価値創造を意識し、取組を進めてまいります。
▶ 四国の森林資源を活用したグリーンリファイナリー事業の共同検討
③ 新分野への取組
CN社会への移行に伴って新たな需要の創出が見込まれる分野(SAF、合成燃料、水素、アンモニア、再エネ、EV関連サービス等)に対し、製油所やサービスステーションをはじめとする既存経営資源との親和性も見極めつつ、機会の取り込みを推進してまいります。
また、グループ会社である南西石油でのSAF製造・供給の検討を開始し、2020年代後半の供給開始を目指す他、水素・アンモニアなど既存インフラの活用が期待される新エネルギーの供給拠点として検討を進めてまいります。
▶ 沖縄におけるSAF/リニューアブルディーゼル製造事業の事業化検討
▶ SDTソーラーパワー株式会社による太陽光発電所の営業運転開始
▶ オフグリッド型ソーラーカーポートを活用したEVシェア実証を開始
④ 災害対策の高度化
災害発生時においてもエネルギーの安定供給という責務を果たすため、自社で策定した防災業務計画に基づいた災害対策を推進しています。風水害等の異常気象への対応としては、防災設備の導入、既存設備の災害対策強化、被災時の対応体制の整備等、防災及び減災のための各種施策に取り組んでいます。
また、災害時においても、石油製品の供給を継続するため、事業継続計画(BCP)を策定するとともに、製油所や油槽所の被災を想定した訓練を定期的に行い、課題の抽出・運用の見直しに取り組んでいます。
今後は、本分析に関連する情報のアップデートやモニタリングを実施するとともに、事業への影響の分析の高度化を進め、対応策をより効果的に推進していくことで、更なるレジリエンスの強化に努めてまいります。
指標と目標
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当社は、以下のとおり、気候変動対策における目標を掲げています。
※太陽石油・太陽石油販売・南西石油の3社を対象とする▶ 2050年の当社ビジョン
自社事業活動に伴うCO2排出の実質ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す▶ 2030年のCO2削減目標
自社事業活動に伴うCO2排出を2013年度比30%削減することを目指す -
2022年度のCO2排出量実績は、Scope1&2は1,222千トン、Scope3は15,426千トンとなっています。
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Scope1&2 CO2排出量 単位:千トン
ガバナンス・リスク管理
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経営会議及びコンプライアンス・リスク管理委員会(CR委員会、議長:代表取締役社長)を活用し、気候変動関連も含めた自社のリスクについて定期的に議論するとともに、その対応について適切に管理しています。
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CR委員会では年に1回、全社的なリスクアセスメントとして、社内各部及び主要子会社が抽出した気候変動を含むリスクについて、 当社事業に与える影響度を議論し、全社重要リスクの特定を行っています。
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特定された気候変動関連リスクの内、事業戦略面については、経営会議にて対応策の審議と各施策の進捗状況報告(年2回程度)がなされています。災害対策等の物理面については、CR委員会にて対応計画の審議と進捗状況の報告(年2回程度)が行われるほか、重要な対応策については経営会議で審議されています。
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経営会議における審議事項・報告事項については取締役会に報告がなされることで、取締役会の適切な監督が図られる体制としています。